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第27回日本登山医学シンポジウム開催される



第27回日本登山医学シンポジウム開催される

野口 いづみ
  2007年6月2日(土)・3日(日)に内藤広郎会長(みやぎ県南中核病院)の主催により第27回日本登山医学シンポジウムが、新緑の美しい蔵王の山懐、遠刈田温泉の宮城蔵王ロイヤルホテルで開催された。学会員60名に、宮城支部会員、蔵王山岳ガイド協会会員、一般登山者など加えて、あわせて156名が参加した。
 特別講演では、宗教民俗学者鈴木岩弓氏が「山と神」について講演し、山を死霊の場と異郷の神の場として分析し、山の“異界性”を明らかにした。塩沼亮潤氏は38歳であるが、大峯千日回峰行を達成された大阿闍梨であり、「大峯千日回峰行―修験道の荒行―」の様子を語った。氏はさらに四無行(8日間飲まず食わず横にならず眠らず行)も達成されたという。回峰行は、毎年5月から9月までの連続する120日間に、48kmの山道を9年間に渡って往復する修行であり、淡々とした口調の中に自然や自己との戦いの凄まじさが伺われた。“回峰行は比叡山と大峯山で行なわれているが厳しいとされる大峯を選んだ、中断は許されず自ら命を絶つことになる、千日回峯行達成後は普通の人に戻る”という話が印象深かった。また、あるとき道の途中でマムシが頭をつぶされて死んでいたがそれは前日に自分が気づかずに踏み潰していったものだったとの由。なお、虫歯の痛さであやうく回峰行が中断しそこなった局面にもあったということであり、回峯行をする前には虫歯の治療を済ませる必要も付記したい。筆者は、人はなぜ回峰行などを修行と称して行なうのだろうかと考えた。それはなぜ登山をするのだろうかという問いに共通するものがあるように感じられた。
 教育講演は蛇研究の本邦第一人者である鳥羽通久氏による「日本の蛇咬症」が行なわれた。氏はマムシやヤマカガシなどによる蛇咬症の現況とともに手当ても解説した。マムシは運動能力が低く、よけて通れば問題ないそうである。咬まれても、毒が体内に入らなければ問題ないそうで、体内に毒が入った場合には早く血清を打てば良いそうである。その場合の相談は日本蛇学研究所0277-78-5193へ電話をするようにとのことだった。氏はペットのように蛇を連れてきており、開陳した。
 シンポジウム「中高年の継続的登山習慣の意義」では、登山が精神と身体の及ぼすポジティブな効果と実態に基づいた安全への提言が、藤本敏彦氏、大森薫雄氏、高山守正氏などによってなされた。大野秀樹氏による、登山を恋愛にたとえた基調講演は、学問的背景をふまえながらオリジナルな発想が展開されていて興味深かった。シンポジウム「登山と栄養を再び考える」では、基調講演で柴田近氏が、キムチに含まれるカプサイシンに食事摂取による排便を誘発させる効果があり、登山時のストレスを軽減させる可能性があることを報告した。さらに三浦豪太氏、天野和明氏、上小牧憲寛氏などによって高所での経験に基づいた栄養摂取と工夫、さらに抗酸化サプリメント摂取の意義、および動物実験の結果が報告された。
 ランチョンセミナーは山本正嘉氏による「スポーツ栄養から見た登山中の水分補給と栄養補給―アミノ酸サプリメント(BCAA)の意義にもふれてー」であった。氏は登山中に必要な水分とエネルギー量の目安について、それぞれ、「体重×行動時間×5」であると示した。さらに、高所トレッキングでアミノ酸サプリメント(分岐鎖アミノ酸BCAA)を摂取した群では筋肉量の低下が少なかったとするデータを示し、体力強化や歩行技術の習得に加えてアミノ酸摂取のような栄養面での配慮が必要であることを示した。筆者には、“真水を摂取すると細胞外液(体液)の電解質(塩分)が薄まってしまい、脱水が解除されたという誤った信号が脳へ送られることになる”という話も興味深かった。
 一般演題は28題が発表された。テーマは雪洞での体温変化、登山前の水分摂取(ウオーターローディング)、富士山頂での馴化、低酸素室トレーニング、登山やクライミングによる運動器系障害、山での事故遭難調査、登山者検診、有病者登山、低酸素環境下での生理的反応などだった。神戸市立中央市民病院の佐藤愼一氏は、六甲山で遭難し24日後に救出後された35歳男性の一例について報告し、里山遭難の死因に外傷直接死と急性病死とともに凍死が少なくない可能性を指摘し、アルミシートの携行を推奨した。
 功労賞は、1974年に日本女子マナスル登山隊隊長を努めた黒石恒氏に授与された。奨励賞は昨年、「富士山頂での酸素濃度器使用経験」を発表した斎藤繁氏に授与された。斎藤氏は都合により出席できず、代理の教室員が追加データと併せて発表した。学会は内容が豊かで、充実した2日間であった。
 次回は高櫻英輔氏(富山)によって開かれる予定で、シンポジウムとして高所環境利用とマウンテン・メディカル・レスキューが予定されています。一般登山者にも十分楽しめ、役立つ学会なので、一般の方も本学会に出席されたり、会員になることをお勧めします。




  

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