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55-732号





登山中の“歯磨き”はどうしたら良いか

野口 いづみ

 「なぜ歯磨きをするのでしょう」と尋ねると、「虫歯にならないために」と答える方が少なくない。しかし、成人にとっては、「歯周病にならないために」という目的も負けず劣らず重要である。小児は虫歯にかかりやすく、歯を失う最大の原因は虫歯であるが、成人になると虫歯にかかりにくく、進行も遅くなる。しかし、ほとんどの成人が多かれ少なかれ歯周病にかかっており、歯を失う大きな原因になっている。なお、「歯磨き」というと、“歯だけをごしごし磨けばよい”というイメージがつきまとうので、「ブラッシング」と呼ぶ方が実態に即している。歯と歯肉の境目に斜めにブラシの毛先をあて、やさしく前後にマッサージする。そうすると、歯垢が除去され、歯肉の血流が良くなり、歯周病を改善するほか、予防効果もある。
 歯周病の原因は口腔内の細菌が大きな原因である。口腔内の細菌は歯周病や虫歯の原因になるとともに、最近では、心臓病との関連を示す研究もあり、遠隔臓器や全身的な病気と歯周病との関係を示す研究が盛んになっている。口腔内細菌が全身に及ぼす影響は想像以上に大きそうである。
 ブラッシングは毎食後行うことが理想的であるが、登山中は難しい。かと言って、数日の登山中にまったくみがかなければ不都合が大きい。1日1回のブラッシングでも適切に行えば成果が得られるので、1回は行いたい。その場合、いつが良いかと言うと、夕食後の就寝前が、行動に余裕がある時間帯で、適している。それとともに、重要なことは、就寝中は唾液の分泌が減少して口腔内の自浄作用が低下し、口の中が細菌培養器状態化するが、就寝前のブラッシングによって細菌の供給源をある程度絶つことができるからである。
 ブラッシングでは物理的に歯と歯肉をマッサージすることで目的が達成されるので歯磨き剤を使う必要はない。しかし、どうしてもさっぱり感が欲しいという者では、少量の歯磨き剤を使うと良い。ただし、山中では口を漱いだ水を捨てることが難しい場合がある。そのような場合には、発泡剤が含まれていないか少ない歯磨き剤を使うと良い。発泡剤が少なければ、口の中が泡だらけにならず、最後に紙でふき取ることができるし、飲み込むこともできる。少量の歯磨き剤は飲み込んでも無害である。


   

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