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36-711号





高所を目指す女性への医学的勧告
―国際山岳連盟(UIAA)の医事委員会からー

堀井昌子

 国際山岳連盟(UIAA)の医事委員会から「高所を目指す女性への医学的勧告」が発表されたので、要旨をご紹介します。高所における女性を妊娠の有無によって分けたものです。
 妊娠していない女性について
 急性高山病は男性と同じ率で発症し、月経の前や後に多いということはない。重症の高山病である高所肺水腫は女性に少なく、手足や顔の浮腫は女性に多い。また、月経周期は高所で変化するが、その要因は、時差、運動、寒冷、体重減少など、あるいはこれらの組み合わせであろう。鉄不足による貧血と診断されたら、高所に行く前に鉄を補充する治療を受けるべきである。
 妊娠中の女性について
 @ アプローチ(トレッキング)では産科的な処置などを受けることはできず、下痢、マラリア、肝炎など感染症に罹ると重症になりやすいが、これらの病気の治療薬は妊婦には使うことができない。
 A 高度障害(急性高山病)は妊婦でも同じように起こるが、ダイアモックスは禁忌である。高所では呼吸数が多くなるが、妊婦は横隔膜が挙がるために、過呼吸になりやすく、多くの水分が呼気から失われるので、十分な水分摂取が必要である。
 B 高所が母体と胎児に及ぼす影響については、妊娠初期は平地でも自然流産が多いので、妊娠の可能性のある人、自然流産のリスクのある人は高所へ行かない方がよい。登山などの運動をせず、また妊娠中毒症の徴候がなければ、2500m程度の高さに数時間から数日滞在しても、母体・胎児に影響はない。数週から数ヶ月滞在する場合は、妊娠中毒症や胎児の発育異常を早く察知するために定期的な検査が必要である。
 C 妊娠後期(妊娠5ヶ月以降)で、母体に妊娠中毒症の徴候がある、胎児の発育異常が予想される、母体に心・肺疾患や貧血がある、禁煙できない、といった場合には高所に登ってはならない。
 D 岩登りとスキーについては妊娠3ヶ月までは腹圧を過度にかけなければ問題ないが、妊娠後期はケガを起こしやすいのでご法度である(B 以下は研究はされていないので、事例に基づく推定による)。


   

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