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707号
| 生活習慣病の予防と登山 |
佐藤 祐造
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(32) 生活習慣病の予防と登山 近年における家庭、職場におけるオートメーション化、コンピュータ化などいわゆる文明化された日常生活は過食(高脂肪食)と運動不足をもたらし、糖尿病を代表例とする生活習慣病を増加させている。 一方、登山は一部の愛好家が競技スポーツとして高山を目指すだけでなく、レジャー活動の普及とともに、生涯スポーツ、健康増進の目的で行なわれるようになり、熟年組によるヒマラヤトレッキングが急激に増加している時代となっている。 適度な食事制限と身体トレーニングの継続が糖尿病で低下しているインスリン感受性を改善させ、糖尿病(2型)の発症予防や病態改善に有用なだけでなく、高血圧、高脂血症等インスリン抵抗性関連のすべての生活習慣病の予防、治療に役立つことは多くの疫学的、臨床的研究によって明かとなっている。 最近、発表された米国の研究成績でも、食事・運動を中心とする生活習慣改善は薬物療法より、糖尿病の発症予防率が高いことが報告されている。しかし、生活習慣改善の長期継続は極めて困難であり、インストラクターがマンツーマンで指導を行なっても、実行率は約半数にとどまっていた。 私共も正常血糖クランプ法を用いて、体力の指標(最大酸素摂取量)に影響を及ぼさないような軽・中等度の身体トレーニングでも、長期にわたって続ければ、体のインスン感受性が糖・脂質代謝面で改善することを証明している。また、運動療法の実施が糖尿病患者を病態を改善させることもよく知られた事実であるが、長期実施は困難であり、中止後病態の悪化を招き、現在人工透析を実施中の症例も経験している。 したがって、それ程急峻でない里山を各人の体力、運動能力に応じてマイペースで登るような運動は、ストレス解消にも役立ち、実行しやすく、生活習慣病の予防、治療手段として今後尚一層推奨されるべきである。 しかし、登山では、高所で脱水に陥りやすく、水分補給は必ず実施する。また、散歩、ジョギングでは、心筋梗塞や外傷などの緊急事態になっても、救急活動は比較的容易であるのに対し、登山は行動中止後も下山が必要であるなど、事前に健康チェックはより念入りに行なわなければならない。 登山が競技スポーツだけでなく、生涯スポーツとして、国民全般の健康増進、生活習慣病の予防対策に活用されることを望みたい。 (筆者は名古屋大学総合保健体育科学センター教授で、本稿は第23回登山医学シンポジウム特別講演で発表された内容の一部です)
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