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706号

若年スポーツクライマーについての問題点

中島 道郎

(31)若年スポーツクライマーについての問題点

 ヨーロッパでは近年、18歳未満の、まだ成長期にある年齢層の若者の間に、過酷な登攀に熱中し過ぎたあまり、指の関節に一生取り返しの付かない障害を残すことになった症例が増えてきており、それが関係者の間で問題になっているという。
 本邦でも、近年スポーツクライムがオリンピック種目に取り入れられそうだという期待の高まりに伴い、10歳未満の幼年期からこのスポーツに入る機運が醸成されつつある。彼ら日本の若者たちに前者の轍を踏ましめないよう、大いに注意を喚起する必要があると信じ、一文を草する次第である。

 手指は、3本の手指骨と3個の手関節(拇指は例外)から成るが、若いうちは手指骨の両端に成長線というやや脆弱な部分があり、ここに過大なストレスがかかると骨がずれて変形したり成長が止まったり、さらには手関節が膨れて変形したりする。

 現在、ヨーロッパのスポーツクライム関係者の間で、指先(第一関節)だけで体を支える登り方(cling)が問題になっている。こういう危険な登り方ではなく、掌を使って(grip)安全に登るべきである、という教育を、トレーナーのみならずクライマーの両親にも施し、正しい認識を徹底させる必要がある、というのである。
 そして、手指骨に上述したような変化が生じていないか、少なくとも年に1度はレントゲン検査を行って経過を観察すべきであると忠告する。

 我々オールドクライマーの時代には、第一指関節だけで登攀するなど、タブーであったし、岩登りでスピードを競う、などという考えはなくて、いかに安全に着実に登攀するかが問われた。
 それが今や、昔は3日かかった岩壁を、4時間で踏破した、という英雄が出現する時代になった。
 彼を追い越そうとする後従者はあとを絶たないであろう。しかしそれを時代風潮として放任せず、本人が生涯禍根を残すような無知な登り方をさせないよう、正しい登攀技術を普及させなくてはならないと、ヨーロッパ諸国の識者は忠告している。

 我々はこの教訓を我がこととして、真剣に取り組まねばならない。
 幸い本邦でも、本会前副会長で整形外科医の大森薫雄博士を中心に、この問題に取り組む動きがあるやに聞いている。それが1日も早く軌道に乗ることを、筆者は希望してやま
ない。