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704号
| 登山とバランス能力 |
山本 正嘉
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(29)登山とバランス能力 中高年登山者の事故が増えていますが、その約半数は転倒、転落、滑落といった「転ぶ」ことに関係したものです。バス・ハイキングで目的地に到着し、バスのタラップを降りるときに転んで骨折、病院行きという笑うに笑えない話もあるほどです。 このような事故にはバランス能力の低下が関わっています。歳をとると筋力、持久力、敏捷性といった体力がすべて低下していきますが、中でもバランス能力は最も著しく低下します。60歳になると、バランス能力は若い人の3分の1くらいになってしまいます。 転倒事故は、今や一般社会でも深刻な問題となっています。日常生活で転倒、骨折し、寝たきりになる高齢者が増えているのです。日常生活では平らで固い地面を歩くので、条件には恵まれています。しかし登山の場合は、斜面、柔らかい地面、そして高所(低酸素)環境と、バランス能力を低下させる原因がたくさんありますから、普段に増して注意が必要です。 最近私が行った実験によると、平らな地面でのバランス能力を100%とすると、登り斜面では43%、下り斜面では52%、また斜面に横向きに立つ場合は,谷足立ちのときで47%、山足立ちのときでは11%まで低下してしまいます。同様に、柔らかい地面では固い地面の66%、標高4000mの高所では低所の73%となります。このように、山では日常生活では考えられないほどバランス能力が低下してしまうのです。 では、どうしたらバランス能力を向上させることができるでしょうか。 バランス能力には,神経系の能力だけでなく、身体を支える脚の筋力も関わっています。ここでは、それらを同時に鍛える簡単なトレーニング法を紹介します。 座布団の上で,片足で立つ訓練をします。慣れないとぐらぐらしますが、それを我慢して立ち続けることによって、バランス能力と脚力が同時に鍛えられます。毎日、この片足立ちトレーニングを左右交互に15秒間ずつ、5セットやってみましょう。 慣れて物足りなくなってきたら、時間やセット数を増やしたり、腰に手を当てる、座布団を厚くする、目をつぶるなど、課題を難しくしてみましょう。家でテレビを見たり、ラジオを聴きながらやれば長続きするでしょう。 (本稿の内容は第23回登山医学シンポジウムで発表されました)
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