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702号
| 登山における食欲低下のメカニズム −キムチパワーで克服できるか− |
内藤 広郎
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(27)登山における食欲低下のメカニズム−キムチパワーで克服できるか− 高所登山を安全に遂行するためにはエネルギーが必要です。そのためには経口的に食物を摂取し、小腸から吸収して、これをエネルギー源にする以外にありません。 ところが、特に高所における低酸素、低温、低圧環境のもとでは食べなくてはいけないとわかっていても全く食べられないということがあります。 仮に、このような過酷な環境でも食物を摂取できれば、その後の食物の栄養吸収と代謝がどのように変動しているかは興味深い問題ですが、未だに研究は十分ではありません。 高所では、経口摂取できない、すなわち著しく食欲が抑制される状況がありますが、その原因についても、わからないことだらけです。ようやく、低酸素、低温、低圧環境にさらされると食欲を抑制するホルモンが分泌されるという報告などが最近みられるようになりました。しかし、やはり食欲を抑制すると思われる胃排出の遅れや胃食道逆流の増悪、胃酸分泌過剰やストレス性胃潰瘍の発症、空腹期に見られる周期的小腸運動の消失、などがみられるか否かについては、不明なことばかりです。 私のこれまでのラットを用いた研究では、低温、低酸素下でラットを拘束すると胃粘膜にストレス潰瘍が発生しますが、胃酸分泌抑制剤や胃粘膜保護剤でこれらの発生が抑制されることがわかりました。最近では、胃排出を促すような消化管運動機能改善剤が臨床の現場では多く使われていますが、これらは高所登山時の食欲低下を改善する可能性があります。したがって、胃酸分泌抑制剤、胃粘膜保護剤、消化管運動機能改善剤を服用しながら登山すれば食欲の低下は軽度に抑えられる可能性はあります。 しかし、クライマーの中には薬剤に頼る登山を嫌う傾向があるのも事実です。そのような場合には、キムチの主成分であるカプサイシンの作用が注目されるでしょう。カプサイシンは最近の研究で、胃排出促進や小腸運動機能促進作用、少量であれば胃粘膜保護作用があることがわかってきました。 本年5月、三浦雄一郎氏が世界最高齢記録のエヴェレスト登頂を達成しましたが、どうやら彼らの食事にはキムチが大量に利用されていたようです。これから証拠を重ねて研究していく必要はありますが、今後の遠征ではキムチを食事に取り入れてみても良いかもしれません。 (本稿は、第23回日本登山医学会のシンポジウム「登山と栄養」(平成15年5月)で発表されたものの要旨です)
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