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高齢者の高所登山と酸素

貫田 宗男

高齢者の高所登山と酸素

 三浦雄一郎さんがエヴエレストの登頂に成功し、世界最高峰の高齢者登頂記録は一気に引き上げられた。
 登演前の3度にわたる高所馴化行動、悪天のため8000b以上で4泊した末の登項そして頂上での余裕のあるトランシーバー交信など、とても70歳とは思えない体力と高所への適応性である。
 しかし、一般的には日本の高齢者の高所登山は、三浦さんのようにはいかない。体力消耗の恐れからほとんど事前の高所馴化もせず、シェルパと酸素に全面的に頼った戦術を採用している。シェルパに持たせた酸素ボンベから伸ばしたチューブで酸素補給しながら8000b峰に登る人もいる。欧米では日本人はシェルパに背負われてエヴエレストに登頂するなどとまことしやかに噂されているとも聞く。
 酸素ボンベもロシア製の超軽量なものは容量4リットル、圧力280キロ/立方センチで重量3・5`と、1970年に日本山岳会エヴエレスト登山隊が使用したものと比べて約半分の軽さのものが出現している。流量も、従来は行動に毎分2リットル、睡眠では0・5リットルが必要とされていたが、今では減圧器の最大流量である毎分4リットルを行動中に流す人が多い。高所ではこの1リットル、2リットルの差は非常に大きい。睡眠時も高流量で流しているようだ。また以前は8000メートルあたりから酸素を使用したものだが、最近では6000メートル台から酸素を使う高齢者も多いと聞く。
 このように全面的に酸素とシェルパに依存した登山ではその酸素補給が切れた場合、事態は深刻である。一時期、最高齢登頂の記録を作った南米在住のスペイン人、ラモン・ブランコも帰路、ヒラリーステップで酸素が切れたとたんに昏倒した。その場に居合わせた登山者の酸素を借りて無事下山したが、他者をも危険に巻き込む可能性のある非常にリスクの高い戦術だということを認識しておかなければならない。またその酸素ボンベの管理もおろそかにはできない。いまやルート工作から荷上げ、キャンプ設営まで一切をシェルパに任せてしまうケースもあるようだが、酸素だけはやはり隊員・登山者が管理することが求められる。
                  (日本山岳会会報「山」700号(2003年9月号))「東西南北」欄掲載)


   

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