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699号

アンチ・ドーピング的生活の勧め

角田 元

(24)アンチ・ドーピング的生活の勧め

 先日、とある競技のドーピングコントロールルームに詰めていました。
 仕事の一つに直前3日間の摂取薬物等の調査があります。主たる対象は高校生でしたが、約半数があるサプリメントを毎日摂取しており、残りの約半数はあるドリンク剤を競技直前に飲んでいました。効果はわからないけど、ドーピング検査では問題ないので毎日摂取していたり、大会のたびに競技直前に飲んでいるらしいのです。今後も一生続けるのか心配になりました。

 ドーピングは、競走馬を興奮させる特殊な餌を与えるdopeという英語が語源です。スポーツ競技では、ある病気を治すための薬剤を、競技力を高めるために用いることを指します。これを調べるために尿検査が行われ、今度は薬剤の使用を隠蔽するための薬物や方法が考案されました。これらもドーピングです。

 最近では、酸素運搬能力を向上させるための血液ドーピング、エリスロポエチンの投与、さらにはエリスロポエチンや成長ホルモンを産生させる遺伝子のドーピングもあります。

 これに対して2000年のシドニーオリンピックからは血液検査も施行されています。科学の進歩とともにドーピングの方法や隠蔽方法が進歩し、それに対して検査の方法も進歩する、といういたちごっこが続いています。

 意外なことに、明らかに競技力が向上すると世界中で認められた物質はないのですが、副作用は必ずあると考えられています。競技力が向上するかも、と薬に頼ったり、青少年がまねをしたり、長年経過した後に副作用が出現したり、というのがドーピングの問題点です。

 上記のような意図的な場合とは別に、風邪などをひいて、うっかり禁止物質を摂取してしまうような場合もあります。しかし、この場合でも違反は違反です。なんとなく総合感冒薬には興奮剤が入っている、という親切な状況もよろしくないのかもしれません。

 結局、サプリメントやビタミン剤には精神的な依存が生じやすいので、なるべく手を出さないようにして、体に良いというよくわからない薬を試してみたりせずに、普段の食事で十分に栄養をとって、適度なトレーニングで鍛えておいて、風邪を寄せつけない身体にしておく、というのがアンチ・ドーピング的生活になります。いわゆる普通の生活ですね。

 蛇足ですが、選手がドーピング検査で陽性と判断された時、うっかり禁止物質を処方した医師も「アンチ・ドーピング規則違反」と判断される場合がありますので、ご注意ください。