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695号

山岳救助国際委員会推奨
―雪崩遭難救助現場対策―

中島 道郎

(20)山岳救助国際委員会推奨 ―雪崩遭難救助現場対策―中島 道郎

 ヨーロッパには山岳救助国際委員会(International Commission for Alpine Rescue, ICAR)という組織があるが、その医療委員会(ICAR-MEDCOM)から先日雪崩遭難者救助マニュアルが出された。詳しくは原著( H. Brugger and B. Durrer: On-site treatment of avalanche victims, ICAR-MADCOM recommendation. High Alt. Med. Biol. 3:421-425, 2002) をご覧いただきたい。

 雪崩遭難者は、事故発生から35分以内に掘り出された場合には救命の可能性がある。早ければ早いほどその可能性は高く、5分以内であれば大抵助かる。
 35分以内でも助からないのは、大部分窒息か致命的外傷である。
 もし意識があれば、温かい甘味飲料を飲ませ、乾いた衣服に着替えさせ、すぐに近くの救急病院に搬送する。意識がなくても自発呼吸があれば、ヘリが来るまで心肺蘇生術を続ける。
 35分を過ぎると、低体温(いわゆる凍死)により蘇生の可能性は低下する。
 助かる可能性があるのは、鼻の先に空気の隙間(エアポケット)があり、しかも気道(のどから気管支にかけての空気の通り道)が詰っていない場合に限られる。だから、掘り出す際に注意することは、ゆっくりでよいから丁寧に、顔の真上からでなく斜めから掘り下げていって、口・鼻の周りに空気の隙間があるかどうかを確かめることが大切である。

 ヘリによる低体温遭難者搬出は、担架にのせ、体を毛布2枚とアルミフォイルでしっかり包み、鳩尾から頭寄りの胸骨上で心臓に近いあたりにカイロを2、3袋のせる(決して皮膚に直接触れさせない)。帽子あるいはフードは絶対必要。乾いた肌着に着替えさせることは望ましいが、体を動かさずにそれを行うのは大変難しい。
 病院に運ばれた低体温者の生死の分かれ目は、食道温で13℃とされている。しかし、現場で測定される耳孔温度計の読みが32℃以下だと蘇生は非常に難しい。

 以上要するに、誰でももし雪崩の現場に居合わせたら、何が何でも5分以内に掘り出すよう、最大限の努力を払う。5分以上でも35分以内ならば救命できるものとして、救出作業を諦めてはならない。35分過ぎて体温が32℃以下でかつヘリの飛来が望めない場合は諦めざるを得ないであろう。