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(19)低体温症を知っていますか
風邪をひくと、平熱37度(直腸温)が2度高くなって39度になるのはよくあることですが、反対に2度低くなって35度以下になってしまうといろいろな症状が出てきます。これを低体温症といいます。
今年の夏、トムラウシ山で2人の女性が亡くなっています。どちらも低体温症による死亡です。
このような悲しい事故が繰り返されないように、低体温症についてよく理解することが大切です。その予防や適切な処置を知らないと大切な友、あるいは自分の命を失うことになります。なぜなら、低体温症を放っておくと、どんどん体温は下がり、数時間後には死が牙を向けて待ち構えているからです。
熱は体の中でつくられ、また、体の外へ放射や蒸発の形で失われていきます。そのバランスが一定に保たれているので、体温は安定しているのです。もし、体から奪われる熱が増加すると、熱の産生が追いつかず、体温が下がってきます。
山で体温を奪う3人の犯人は、寒さと風と水(雨、雪、汗)です。ですから、この3つから体をガードする必要があります。
夏山で急に土砂降りに遭い、身動きができずただ雨に体をまかせていると、しだいに震えが止められなくなり、歩きもふらつき、眠くなってきたり、ものを忘れやすくなります。もっとひどくなると、震えが止まり、歩くことができず、受け答えもできなくなってきます。こうなる前にツェルトを張ったり、小屋に入ったりして雨を防ぎ、濡れたものを着替え、温かいものを口に入れて、体の芯から温めることにより低体温症を防ぐことが必要です。
また、「遠くから高いお金を出してやってきたのだから、少々の悪天でも頂上にいくぞ、そして百名山の1つを征服するぞ」という無理が、恐ろしい結果を呼ぶことがあります。
「いつでも山は登れるんだ、今日は退却だ」という、勇気ある撤退が必要です。
そういう私も、フランスのモンブランでスキー滑降中にクレバスに落下し16時間も宙吊りになった後に救助された経験があります。そのときの体温は28度で、あと1度低ければ心臓が止まる寸前でした。
その体験談と、低体温症についての本を出しました。『凍る体』という題名で、山と溪谷社より発行されています。どうか一読ください。
注:医療委員会講演会(14年11月9日、杏林大学医学部)より抜粋しました。
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