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687号

パルスオキシメーターと酸素飽和度

新井 康弘

(12)パルスオキシメーターと酸素飽和度 

 高所トレッキングや高所登山にでかけた方は経験があると思いますが、「パルスオキシメーター」という器械を使って、血液中に含まれる酸素の指標のひとつ「酸素飽和度」を測ることができます。この測定は、医療の現場では呼吸器症状を呈する患者さんに対して、以前から行われています。

 山では標高が高くなるほど空気が希薄になり、呼吸によって体に取り込まれる酸素量が減ります。酸素は赤血球中のヘモグロビンと結びついて全身に運ばれるので、ヘモグロビンの量と酸素の量はともに大切です。
 すべてのヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)の割合(%)を酸素飽和度といいます。この値は大気中の酸素が少ない場合や、肺などに問題がある場合低下します。酸化ヘモグロビンが多い動脈血の色は鮮やかな赤色で静脈血とは違います(吸収される波長が異なります)。パルスオキシメーターは皮膚の上からある波長の光を当て、その吸収のされ方から血液中の酸化ヘモグロビンの割合を計算しますが、動脈血の酸素飽和度を測定するために、拍動(パルス)に伴って変化する成分だけを取り出しています。

 健康な人の平地での値は96〜98%です。何らかの病的な理由で90%を切るようになりますと、医療の現場では一般的に酸素吸入が必要と判断されます。山ではどれくらいの数値になるかといいますと、たとえばエヴェレスト街道をトレッキングした300人以上についての検査では、朝食前の平均値が標高約2800mで91%、3500mで86%、3900mで84%、4400mで83%、4800mで78%でした。同じくキリマンジャロのポピュラーなルートでは、標高1800mで94%、2700mで91%、3700mで85%、4700mで75%でした。
 この中には途中で引き返した人のデータは含まれていません。ある高度でこの数値に近
ければ、少なくともその時点では人並みであることになります。逆にこの数値から著しく
外れている場合は、測定が適切でない可能性や、呼吸器系や循環器系に問題が生じている
可能性を考える必要があります。

 高所経験の豊富な人は自分なりの体調把握法を持っていると思いますが、そうでない人や初めての高度を体験する場合は、自覚できない変化を捉える指標として参考になると思います。しかし、数値に振り回されることなく、からだ全体を見渡しながら判断することがそれ以上に大切です。