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685号

腎臓病と山登り

濱口 欣一

(10)腎臓病と山登り 

 「会社の健康診断で血尿、蛋白尿を指摘されたのですが、山に行っても良いのでしょうか」こんな質問をしばしば受けることがあります。かかりつけのお医者さんに相談したら、と返答したところで、そのお医者さんが腎臓専門医であるとは限らないし、仮に専門医であってもスポーツドクターであるとは限りません。スポーツをする人にやるなと言うのは酷なことであり、その点、スポーツドクターは障害度に合わせたポジティブな情報を提供することができます。今回「腎臓病と山登り」を考えてみましょう。

 腎臓病の発見動機には、学校検診、職場検診などの健康診断や、風邪に罹患した時に医療機関を訪れ、偶然に尿所見異常(血尿、蛋白尿)を指摘されることなどがあります。この所見には、軽少な疾患から重症な疾患まで含まれているので、注意が必要です。

 まず、内科腎臓専門医に相談し、正確な診断をしてもらうことです。運動負荷が腎臓病に及ぼす影響にはいくつかの報告がありますが、長期間の影響はまだ明らかにされていません。軽症で非進行性と考えられる疾患では厳しすぎる運動制限は良くありません。身体的にも心理的にも、健康を増進するために運動を積極的に行った方が良い場合があります。
 しかし、この場合には激しい運動負荷が腎疾患を進行、悪化させることがないように十分観察することが重要な条件になります。

 腎臓病といってもその内容は多岐にわたりますが、ここでは日常しばしば遭遇するIgA腎炎に関して述べます。運動負荷後の種々の検査データは、その病理組織像によって非常に異なることが明らかにされています。たとえば、病理組織像が良くない人は、運動負荷後の検査データも良くありません。一方、同じような腎組織像を呈する患者群を、運動制限群と運動負荷群の2群に分けて検査をしたところ、1〜1.5年後に6人中腎臓機能が悪化したのは、運動制限群で5人、運動負荷群では1人という結果が得られ、日常生活における適度な運動は、決定的な腎障害進展因子にはならない、という報告もみられます。むしろ体力が向上し、IgA腎炎が改善されたという報告さえなされています。

 だからといって、自分勝手に判断することは厳に慎み、腎臓専門家に相談をしながら結論を出すことを十分に認識するべきです。病気の状態を十分に理解し、楽しい山登りをしたいものです。