![]()
684号
| 凍傷の保存的治療 |
長尾 悌夫
|
(9)凍傷の保存的治療 某大学山岳部員が春山で足指の凍傷にかかり、帰京後診察を受けた病院で直ちに切断と言われ、監督に勧められて来院した。 右第2、左第2・第3の足指の先端が第4度の凍傷であり、切断もやむなしという状態であった。しかし、罹患部位が指先部だったので、保存的にやれるかとも考え、切断と保存的治療の利害得失を説明し、時間はかかるが保存的にやろうと説得した。 不潔になりやすい足指であり、細菌感染防止と循環状態改善のため、自宅で毎日薬液を混ぜた温湯による足浴を励行させた。患部は感染の徴候もなく、理想的な乾性壊死となり、罹患後2か月でちょうどドングリの総苞が落ちるように壊死部が脱落し、あとに爪も生えかけているきれいな指先が現れた。指長の短縮も最少限ですみ、本人は満足してその年の夏山合宿にも参加した。 第4度の凍傷では、通常部分的にせよ切断は避けられないが、手術は決して急いではいけない。壊死部の分界線が完成するまで4週間は待つべきである。指先部だけの罹患であれば、自然脱落を待ってもよい。凍傷治療すべてに言えることだが、局所を乾性壊死にすることが大切で、そのために軟膏類は一切塗布してはならず、患部は薬浴などで清潔に保ち、軽く包帯をする程度でよい。 自然脱落まで今回は2か月と早かったが、通常は3か月くらいはかかる。脱落のあとは外科的な処置は不要である。 凍傷は何よりも予防が第一であるが、罹患してしまったときは、現場では40〜42℃の温湯による急速融解を行い、再凍結を防ぎながら下山して、医師による治療を受けることになる。部位によっては保存的治療という選択肢もあるので、外科医なら誰でもよいというわけではなく、凍傷治療の経験のある医師に相談すべきである。
|