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(6)高山病予防と体力トレーニング
1952年以来今日まで6000m以上の高峰登山者約1万人のうち252人が遭難死している。しかも1968年以降今日まで、毎年遭難死が連続している。
ここで改めて「43人の高峰登山者のうち1人は生還できない」すなわち2.3%の致死率である事実を深刻に再認識する必要がある。
この遭難死の原因には、雪崩(49%)、転落(32%〉および高山病(8%〉があげられているが、これらの根底には低酸素環境による高所障害(広義の高山病)が関与している。そこで高山病予防への体力トレーニングの生理的意義について明らかにしてみたい。
高峰登山で成功を収めるためには、体力、技術、経験および精神力の相乗積である「心・技・体」が要求される。このうち体力要素は、筋力、持久力および調整力などの「行動体力」と各種ストレスに対する耐性能力である「防衛体力」からなっている。登山時にはこの両要素の体力が必要となるが、とくに寒冷や低酸素環境ストレスへの適応能力の重要性からすると「防衛体力」の比重がより大きいものと考えられる。すなわち高山病予防のためには防衛体力の向上が不可欠であるが、この要素の向上には行動体力要素を高めることが前提になると指摘されている。
メスナーは毎日1時間のランニングと筋カトレーニングを20年以上にわたり継続し、安静時の心拍数53拍/分、血圧105/75mmrであり、左心室と大動脈の肥大したいわゆる「クライマー・ハート」の持ち主であった。さらに、下肢筋のエネルギー生産工場のミトコンドリアの増殖が顕著であった。
このような体力トレーニングの継続が低酸素環境での登山時の動脈血酸素飽和度の低下を抑え、低酸素換気応答の亢進をもたらし、高山病予防に貢献していたものと考えられる。
さらに運動トレーニングを継続することにより「血液のサラサラ度」の向上が期待でき、高山病を予防する可能性が指摘されてきている。
栃木県山岳連盟ムスターグ・アタ峰登山隊(1998)でのわれわれの研究では、4400mに18日間滞在中の全血通過時間と高山病(AMS〉、血色素濃度(Hb)などの関係を経日的に測定した。
この結果、滞在初日AMSは高値を示し、Hbも高値で血液はドロドロ状態であったが、経日的に減少して全血通過時間の短縮が認められ「サラサラ度」の向上と共にAMSが低値を示した。
したがって登山前の鉄分補給などによる赤血球、Hbの増大はサラサラ度を低下させ高山病を発症する危険性があることを留意する必要がある。
このように「血液のサラサラ度」の向上は高山病予防に貢献し、運動トレーニングの継続によりもたらされることが明らかにされている。
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