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677号

高山病の理解

中島 道郎

 (2)高山病の理解

 高山病は[病]とは書いても、ヤマイ(disease)すなわち体臓器の器質的変化ではなく、ワズライsickness)、すなわち臓器の機能的失調にすぎない。海抜およそ2000m以上の高所環境では、大気中の酸素分圧が低下することにより正常の生命現象がうまく保持されなくなる。つまり機能的失調状態に陥る。そのことを高山病というのである。

 高山病には、急性高山病(AMS)、高所脳浮腫(HACE)と高所肺水腫(HAPE)の3病態があるとされるが、その本態は要するに体内水分の分布状態と貯留量の異常である。異常は全身におよぶが、その症状の軽重は分布臓器と貯留量によって決まり、特に顕著な症状を呈する臓器は脳と肺である。貯留水分量が少ない間は軽い脳症状を呈するだけで、これをAMSと呼ぶが、貯留水分の増加につれて脳症状が顕著になってくるものをHACE、肺症状が強くなってくればこれをHAPEと呼ぶことになる。
 要するに高山病の3病態とは、症状出現臓器と分布水分量の違いだけで、本質的には同じものである。

 高山病の症状は、高所は到達してから6時間ないしそれ以上の時間経過の後出現してくる(たとえば、ユングクラウ・ヨツホに上った旅行者が山項駅でふらつき、むかつきを訴えるのは、過換気による一過性脳虚血であって、高山病ではなし)。頭痛が率発で、それに悪心・嘔吐その他種々の全身的諸症状が加わるが、詳細を述べる紙面がないのでここでは省く。

 高山「病」の治療法はない。あるのは下山対策のみ。大切なのは罹らないための対策で、初めて到達した高度にそのまま泊まることをせず、宿泊地と決めた地点からさらhに200〜300m上った後、降りて泊まる。これを「登高泊低」(ClimbHigh,Sleep Low)の原則という。
 またアセ夕ゾラマイド(ダイアモックス〉の服用は有効で、登山開始の前日から高所到達2日後までの4日間、毎朝1錠(250mg)ずつ服用する。それ以後は高所滞在中、ズルズルと飲み続ける必要はまったくない。

 たとえばチベット旅行なら、ダイアモヅクス服用は、ラサ到着前日から到着の翌々日まででよい。また、ラサ空港からそのままホテルに直行するのではなく、バスでいったん近くの峠まで登り、引き返してホテルに泊まることを勧める。

 飛行機でなく、ゆつくり日数をかけて高度を稼ぐ型の旅程の場合は、ダイアモツクスも登高泊低の原則も不要である。