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肺のう胞症と登山について


Q.11  肺のう胞
2006/01/20 宮崎浩 さん
 67歳です。トレッキングですが、5000メートル前後の山に年1,2度行きます。最近、人間ドックで肺のう胞と診断されました。高い山に行くと、破裂するおそれがあると言われ、気になり始めました。何をどうすればいいのか、見当がつきません。アドバイスをお願いします。



A.11
 肺嚢胞症と診断されたが、山に登る時どうしたら宜しいのか?というご質問ですが、医師としての答えは一つ。「高所登山はおやめなさい。」
 肺嚢胞症とは、何らかの原因で、肺の一部に空気の出て行きにくいところが出来て、呼吸するたびに、吸気は入るが呼気は出て行きにくい、という現象が生じ、その部分(すなわち嚢胞)に空気が徐々に、しかも確実に溜まっていって、ほかの健常肺部分を次第に圧迫してゆく病気のことです。これは体質ですから、治るということはありません。高所では肺胞内の気圧と外気圧との差が大きくなるので、嚢胞は低地におけるよりも膨大し、息苦しさは更に増加します。
 これから先は医学の話ではなく、お説教になります。
 肺嚢胞症の人は高所で生存するのは不利です。「それでもオレは登りたい、どうかしてくれ」と言うのであれば、これは医学の領域でなく哲学の領域に入ります。そうまでして山に登る意味は何ぞや?と言う問題です。人間は一人では生きてゆかれません。人に助けられ、迷惑をかけながら生きているのです。ひとが生きてゆくのに不利な立場に立ったとき、それでも生きてゆくためには、それだけ他人に負担をかけます。他人に迷惑を掛けながら、それでもその行為を続けると言うのであれば、何故自分はそれがしたいのかを説明し、それを納得させる義務があります。高所で、自分の体に何か異状が生じるリスクが高い、ということは、それだけ他人への迷惑をかけるリスクが高いという言葉におきかえて考えるべきです。「これは他人に迷惑かけてもそれに値する行為なのだ」と納得させられますか?
(前日本登山医学研究会代表幹事 中島道郎)


A.11-1  肺のう胞のある方の高所登山についての補足
 肺のう胞の重症度にもよる点があるのではないかと、中島氏に再度、お尋ねしましたところ、次のようなお返事がありました。
「確率の問題ですが、どうなったらどの程度危険度が増すか、というようなことに関して、なんら科学的な根拠はありません。ですから、ここから先は医学ではなく、人生観になると言ったわけです。肺嚢胞症患者は高山に登ってはいけない、とは誰も言えません。だから、あの文章では、「いけない」とは言わずに、「おやめなさい」という言い方をしたのです。禁止ではなく忠告のつもりです。」
 要は、「医学的に確実なガイドラインは目下のところない」ということです。データに基づいてモノがいえない以上、医師としては慎重な立場に立たないわけにはいかないでしょう。
 いずれにせよ、私は次のように考えます。まず、各種呼吸機能検査の結果を参考にして疾患の重症度を把握すること(宮崎様から具体的な数値が提示されていません)は必須です。今後、医学的には、呼吸機能障害のある方について低酸素室で各種パラメータを測定して安全限界を把握することと、これらの方が高所登山されたときにどうであったかの具体例の検討、これらの科学的なデータの集積が必要です。
 また、お返事は他の某先生にいただけるということで、待っていたのですが、いただけず、遅くなってしまったことをお詫びいたします。
(日本山岳会医療委員会  野口 いづみ)


A.11-2  低圧と低酸素室
 呼吸機能患者さんの病態の実験・検査は低圧低酸素室で行うことが適していますが、実際上、低圧室は設置に多額の費用がかかり、国内で数は多くないと思います。それに対して、“低圧は得られないけれど低酸素にはなる”低酸素室の方が数が多く使用しやすく、便宜上、低酸素室としました。まあ、同じように低酸素室といっても、機能的にかなり差がありますが。
 なお、肺のう胞は肺に風船のような袋ができてしまう病気で、肺気胸(肺に穴が開いてしまうこと)が懸念されますが、これは通常、高圧環境下(つまり海の中など。高所は低圧環境)で危険性が高まります。しかし、やはり、高所へ急に上り、急に下がるという負荷もリスクファクターにはなるでしょう。
(日本山岳会医療委員会  野口 いづみ)




   

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