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アスピリンの“血液さらさら”と登山について


Q.4  アスピリンについて
2005/03/04 杉坂 千賀子 さん
 1月20日のシンポジウム“山での突然死を考える”で、高山守正氏は、「アスピリンは血液をさらさらにする効果があり、“小児用バファリン”が処方されることもある」と話されましたが、大人用では強すぎるのでしょうか?そのような場合は小児用がよいのでしょうか?



A.4
 講演では、「小児用アスピリン」とされましたが、医療用としては現在、名称が変更になり、「バファリン81mg錠」、「バイアスピリン」という名前の薬になっています。小児ではインフルエンザなどのウィルス疾患にアスピリンを投与するとライ症候群という脳症を起こす場合があるので禁忌です。ややこしい話ですが、現在、市販されている「小児用バファリン」はアスピリンを含んでいず、主成分はアセトアミノフェンですので、“血液をさらさらにする”作用はありません。また、成人用に「バファリン」という名前で市販されている薬には主成分がアスピリンのものと、そうではなくアセトアミノフェンのものがあります。アセトアミノフェンは“血液をさらさらにする”効果はないので、市販薬を購入する時には成分を確かめることが必要です。
 アスピリンは解熱・鎮痛薬として有名ですが、医療上、それと同程度に重要な作用に抗血小板(血小板凝集能抑制)作用があります。血小板の凝集が抑制されると、血液が固まりにくくなります。つまり、”血液をさらさらにする”効果があります。そのために血液凝固→血栓を起こしてほしくない人(狭心症、心筋梗塞や脳梗塞の既往のある人)や、起こす危険の高い人(心房細動などの不整脈のある人(例:長島茂雄さん))に、アスピリンが予防的に投与されています。
 現在、抗血小板凝集能抑制薬として処方されるアスピリンには、「バファリン81mg錠」と「バイアスピリン」があります。アスピリンの量は、以前の「小児用バファリン」と現在の「バファリン81mg錠」は81mg、「バイアスピリン」は100mgを含みます。“血液さらさら”作用を目的に内服する場合の量は1日あたり1錠、81〜100mgです。それに対して解熱・鎮痛作用を目的とするアスピリンには「バファリン330mg」などの商品があり、これを1日に500〜1500mg内服します。効果をあらわす血液中の濃度は、“血液さらさら”(抗血栓)は1〜2μg/mlであるのに対して、鎮痛は25〜50μg/mlと、“血液さらさら”は鎮痛の約25分の1と、少量です。つまり、“血液さらさら”にするためには、「バファリン330mg」でいうと、1錠の1/3〜1/4錠で、良いことになります。ですから、普通のバファリンでは強すぎるというよりは、“血液をさらさら”にするのに必要な量以上に内服してしまうことになるということです。
 病気のない方でも、脱水によって血液が濃くなると血栓ができやすい状態になります。登山では、汗をかいたあとに十分に水分を補給しなかったり、トイレが近くなるからと意識的に水分を摂らなかったり、あるいは前夜に深酒をすると、脱水状態になって血栓ができやすくなります。また、高所では一層、脱水をきたしやすいので、要注意です。血栓への対策としては、水分補給が第一ですが、“血液さらさら”量のアスピリンを内服することも予防になるでしょう。
 欧米人は高所で血栓予防のためにアスピリンを内服しているのをみかけますし、2004年5月にエベレストを登頂した河野千鶴子さんもアスピリンを使っていたと聞きました。ただし、アスピリンは副作用として、怪我などをした場合に出血を止まりにくくさせるということと、胃の粘膜を刺激して炎症や潰瘍を起こす場合があります。特に日本人は消化管系障害を起こしやすいことが知られており、抗血栓に必要な量以上になる過量な内服は有害です。また、高所では胃潰瘍を起こす場合があるので、一層、注意が必要です。
 “血液さらさら”を目的とした低用量のアスピリンは市販されていないので、医師の処方が必要です。市販のアスピリン錠を細かく分割して内服するのは量が不正確になりやすいので、医師に処方してもらうことが勧められます。
(日本山岳会医療委員会  野口 いづみ)


A.4-1  河野千鶴子さんとアスピリン
 先日、河野千鶴子さんにお会いする機会がありました。お聞きしたところ、チョーユー、エベレスト、アコンカグアと、アスピリンを使ったそうですが、帰国後、いつも胃痛があり、ストレスによるものと考えていたそうです。しかし、使っていた錠剤が330mg錠だったそうで、アスピリンによる胃障害の可能性があることがわかりました。6月にガッシャブルム?峰へ行かれるそうですが、アスピリンの内服量を抗血栓量の81〜100mgの錠剤にするとのことでした。
(日本山岳会医療委員会  野口 いづみ)



Q.4-1  アスピリンの血液さらさらと胃腸障害について
2005/08/07 敷路沖重名瀬 さん
 Q&AのNo.4「アスピリンの“血液さらさら”と登山について」において、
『欧米人は高所で血栓予防のためにアスピリンを内服しているのをみかけますし、2004年5月にエベレストを登頂した河野千鶴子さんもアスピリンを使っていたと聞きました。ただし、アスピリンは副作用として、怪我などをした場合に出血を止まりにくくさせるということと、胃の粘膜を刺激して炎症や潰瘍を起こす場合があります。』
との記述がありますが、実際、アメリカでは、アスピリンなどによる胃腸障害により、年間5〜10万人が入院し、2000人以上が死亡するというデータもあるようです。これはなんとあらゆる薬の副作用被害の4分の1以上に相当するのだそうです(アスピリンの消費量が他に比べて圧倒的に多く、医師の指示なしに飲めるからでもあるのでしょうが)。

 もし今アスピリンが新薬として申請されたなら、この副作用があるため、まず認可されることはないだろうとまでいわれているようです。しかし、ある意味で、人類はこの100年でアスピリンをしのぐ薬をただのひとつも作り出せていないとさえいわれているようにも聞きます。

 最近になり、胃腸障害の副作用が少ない「スーパーアスピリン」なるものが開発されて爆発的な売り上げを記録しているようですが、しかしこれも、2004年9月30日、ロフェコキシブを製造している米国メルク社が、ロフェコキシブの服用で心筋梗塞発症のリスクが増加することを理由に販売を中止することを表明したそうですし、また、スーパーアスピリンには、そもそも「血液さらさら」効果は無かったということだそうです。

 さて、そこで質問ですが「血液さらさら」効果を得ようとすれば、胃腸障害覚悟でアスピリンを服用するほかないということなのでしょうか?
 アスピリンのほかに現在、妙薬は無いのでしょうか?




   

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